記事では、所得の2割超も国保の保険料に持っていかれる自治体もあり、自治体間で3.6倍も保険料に格差があるとして、公平性に疑問を投げかけている。
記事によると、「世帯所得200万円で、40歳代夫婦と未成年の子2人の4人家族。固定資産税は5万円」というモデルを設定し、年間の国保の保険料を算出して比較したという。
国保の低額な自治体として紹介されている自治体のサイトを少し覗いてみたが、「村」のせいか、ネットで国保の計算式を出している所が見当たらなかったので、高額な自治体として紹介されている別府市のサイトを覗いてみた。
http://www.city.beppu.oita.jp/03gyosei/koku-hoken/kokuho.html#07
別府市のサイトでは、子供のいない所得200万の夫婦の例が記載されいて、年度が違うためか、ざっくり計算すると毎日新聞の金額と微妙にずれる気もするが、記事でいうところの「所得」というのが、収入でないことが読み取れた。
とすると、税理士的な発想をすると、この試算の前提となる「世帯所得200万円」というのが、収入ではない以上、記事のように単純に国民健康保険が「所得の2割超も」として糾弾するのは、微妙である。
40代夫婦という前提なら、年金でないことは確かだか、給与所得か事業所得かでも、現実のキャッシュインフローは大きく異なるからである。
例えば、給与所得ならば、所得が200万であっても、単純に1人でそれを獲得しているとするならば、収入にすれば、311万程度である。しかし、共働きが多いのが現状である。例えば、別府市のサイトによると、所得割は1人ずつ計算とあるので、配偶者等がパートで年間98万円の収入があっても、所得割はかからないので、世帯としての国保の保険料は同じである。
あるいは、事業所得ならどうか? この場合も青色申告特別控除や、事業専従者給与を考えれば、話はそう単純ではないだろう。
所得200万に青色申告特別控除65万をプラスして、ついでに所得割のかからない、事業専従者給与98万に設定していれば、363万円の「収入」も想定可能である。
いずれにせよ、国保は高いとは思うが、毎日新聞のように「所得の2割超も」などと書き立てるのは感心しない。「所得の2割超も」などと書くと、普通の人は、収入の2割超も国保の保険料で請求されると誤解するだろう。それが狙いだろうが、そんな読者のミスリードを誘う記事が一面トップとは、浅ましい限りである。